メッキQ&A
アルマイト皮膜にクラック(割れ)が発生する主な原因は、アルミ
ニウム母材とアルマイト皮膜の熱膨張係数の違いです。
アルミニウムはアルマイト皮膜よりも熱膨張係数が大きく、加熱すると
大きく膨張します。
一方、アルマイト皮膜は熱膨張が小さいため、母材の膨張に追従できず、
応力が発生し、その応力に耐えられずにクラックが発生します。
一般的なアルマイト皮膜は100℃程度からクラックが発生し始めると
言われています。
その他の要因として以下の内容が考えれます。
1.皮膜の厚みが過剰
アルマイトの膜厚を厚くした場合(硬質アルマイトなど)は、成膜時の
体積膨張や内部応力が大きくなりやすく、ひずみや応力集中により
クラックが生じやすくなります。
2.素材自体の問題
素材の組成や結晶粒の粗さ、不均一性、鋳造欠陥(ピンホール・巣)など
があると、応力が集中してクラックの起点になります。
3.処理条件の不適切さ
電圧や温度、電解液の組成が適切でないと、皮膜内に過剰な応力が蓄積され、
クラックが起きやすくなります。
4.機械的外力や加工応力
加工(曲げ・打痕)や組立時の応力、または陽極酸化後の研磨・洗浄時に
機械的な力が加わると、脆い皮膜が割れることがあります。
5.乾燥時の水分蒸発による収縮
アルマイト処理後の乾燥工程で急速に水分が蒸発すると、皮膜に引張応力が
かかりクラックを誘発することがあります。
6.再処理(再アルマイト)による皮膜劣化
既に形成された皮膜の上に再アルマイトをかけると、下地の皮膜との間に
応力差が生じ、クラックが発生しやすくなります。