亜鉛めっき

めっきをする場合に、欠かすことの出来ない存在である亜鉛めっき。

亜鉛皮膜は、光沢を有し、反磁性を示す青味を帯びた銀白色の金属であり、素材に見合った亜鉛めっきを選択するかどうかで、耐食性が左右される場合があります。
ここでは、どのような場面で亜鉛めっきの種類を選択するのかを解説します。

亜鉛めっきが錆びない理由

亜鉛めっきとは、素材の亜鉛を電気や浸漬によって析出し亜鉛の持つ特性を付与するめっき方法です。

亜鉛めっき皮膜は、防錆効果が高く主に鉄製に対して処理を行いますが、これは亜鉛めっき上に不動態膜が生成されるからです。

たとえば、亜鉛めっき膜にキズがついて素材が露出してしまった場合、その露出部分に亜鉛が溶出することで、再度鉄に不動態膜が生成されます。これにより高い防食効果を損なうことなく亜鉛めっき膜の犠牲防食という反応が得られるのです。

【亜鉛めっきの犠牲防食】

亜鉛めっきの犠牲防食

亜鉛めっきの選択肢

亜鉛めっきには電気亜鉛めっき溶融亜鉛めっきの2種類があります。電気の力でめっきする方法が電気亜鉛めっき、亜鉛を高温で溶解しめっき処理する方法が溶融亜鉛めっきといわれています。

亜鉛めっきの選択肢

電気亜鉛めっきとは?

電気亜鉛めっきは、電流が鉄から亜鉛に向かい亜鉛が液中で陽極となって溶解するので、鉄の錆を防ぐ効果があります。

素材に電気を使用してめっきする方法は、均一で精度のよい薄い亜鉛皮膜を析出することが出来るので、精度を要求される素材に適しています。

しかしそのままでは、亜鉛めっき皮膜が酸化し腐食してしまうので、クロメート処理を行い耐食性を向上させなければなりません。

【電気亜鉛めっきの原理】

電気亜鉛めっきの原理

処理方法はラック(ジグ)に1個ずつ製品を固定し処理をする場合が多いので、キズを付けずに処理出来ます。

電気亜鉛めっきの特徴は?

電気亜鉛めっきの特徴は9つあり、様々な特性を付与することが可能です。

  • 1.電気特性としての導電性
    亜鉛金属の導電性は5.9×10-6 Ω-cmと良好で、クロメート処理で更に導電性が高くなる
  • 2.加工性
    2.5モース硬度なので、常温では脆くめっき後の曲げ加工には多少の問題があるが、良好
  • 3.脆性
    亜鉛めっき処理後、4時間以内に200℃で数時間処理すると水素が放出すので、脆さがなくなり車のボルトなどに使用可能
  • 4.はんだ付け性
    亜鉛の状態では問題なく使用可能
  • 5.耐食性
    亜鉛めっきだけでは、白錆が発生するのでクロメート処理にて補い、防食作用を付与出来る
  • 6.皮膜に保護作用
    亜鉛の酸化皮膜は、空気や水を通しにくく亜鉛を析出するため防錆力がある鉄製品などに行う亜鉛めっきを補う為にクロメート処理を行うことにより耐防食性が向上
  • 7.犠牲防食作用
    亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きいため
  • 8.皮膜にピンホールがあっても鉄鋼製品の錆び止め効果が大きい
    亜鉛が犠牲になるためにキズの周囲の亜鉛が鉄よりも先に溶け出すことにより、電気的に保護する
  • 9.価格が安い
    バレルめっきという手法があり、大量の処理が可能で価格を安くできる

電気亜鉛めっきのめっき浴とは?

電気亜鉛めっき浴には、アルカリ性浴としてシアン化物浴およびシアン物を含まないジンケート浴、酸性浴として塩化亜鉛めっき浴があります。
シアン化亜鉛めっきは、優れた皮膜特性やウイスカが出にくいという長所がありますが、シアン化合物を使用しますので毒性が問題になり、シアン化合物を含まないジンケート浴や塩化亜鉛浴が用いられるようになってきました。

【亜鉛めっき浴の種類と特性の表】

シアン化物浴 ジンケート浴 酸性浴
硬さ(Hv) 60~80 90~120 70~90
均⼀電着性
低⽔素脆性性 × ×
鋳物へのめっき × ×
プレス物へのめっき
ビス、ボルトへのめっき
クロメートの密着性

◎:良好 ○:普通 ×:悪い

電気亜鉛めっき処理の工程とは?

電気亜鉛めっきが完成するまでの一般的な工程を図でまとめました。

電気亜鉛めっきの工程

電気亜鉛めっき後のクロメート処理とは?

電気亜鉛めっきにて析出した亜鉛皮膜は、そのままの状態では白錆が発生するので腐食してしまいます。そこで腐食しないよう開発されたのが、六価のクロム酸を主成分とする処理液で表面処理するクロメート処理という方法です。

クロメート処理の使用目的

  • 1.白錆を防止して耐食性を上げる
    白錆とは、白色または白色に一部淡褐色の斑点を伴う、かさばった亜鉛酸化物が亜鉛めっき表面に形成された状態で、外観は白墨の粉が付着している感じ。白錆は亜鉛光沢のあるめっき層が、雨や露でぬれて容易に乾燥しない
  • 2.外観を美しくする
  • 3.指紋その他の汚れを付きにくくし錆びないようにする
  • 4.塗装との密着性を向上させる
  • 5.電導性を上げる
  • 6.鉄生地まで深く入ってしまったキズからの腐食を防止する

クロメート処理の原理

クロメート処理の原理

クロメート処理は4種類に分かれており、JIS規格(H8625)にて等級・種類及び記号および膜厚が規定されています。

クロメート処理の種類と特徴

光沢クロメート
ユニクロとも呼ばれ亜鉛めっきの厚みは5µm厚以上必要
有色クロメート
クロメートとも呼ばれ亜鉛めっきの厚みは10µm厚以上必要
黒色クロメート
黒亜鉛とも呼ばれ亜鉛めっきの厚みは10µm厚以上必要であり海岸地帯で使用
三価クロメート
六価クロムのクロメート皮膜中に六価クロムが含まれているので有害であり、三価クロムの化成処理に変更し環境に配慮しRoHS指令に抵触しない処理

クロメート膜の色調による分類と特徴

色調による名称 特徴 塩水噴霧試験
白錆発生時間
光沢クロメート 薄い青色光沢外観。
6価クロム含有が少ないの耐食性は良くない
24~72時間
有色クロメート 黄色から赤色の外観。色の濃い程、
6価クロム含有率が高く、耐食性が良い
96~150時間
黒色クロメート クロメート液中に銀塩を含む。
反応によりAg2Oを生じて黒色に発色する。
乾燥シミが出やすいので手早く乾燥する
96~150時間

電気亜鉛めっきの事例

  • 光沢クロメート
    事例1 光沢クロメート
    素材SS400 自動車部品へ5µm厚を処理し耐食性よりも美観性を付与
  • 有色クロメート
    事例2 有色クロメート
    素材S45C 自動車部品へ10µm厚処理し高耐食性を付与
  • 黒色クロメート
    事例3  黒色クロメート
    素材SS400 海岸沿いの湿度計へ10µm厚以上処理し高耐食性を付与

溶融亜鉛めっきとは?

450℃程度の溶解した亜鉛めっき槽に製品を浸漬し冷却する方法で、電気めっきのように膜厚調整が困難ですが、全体的なめっきができます。
製品の影になる部品へのめっき処理が可能なので、大きな製品に向いていますが、素材に反りが発生するため精密部品への処理は向いていません。

溶融亜鉛めっきの工程は?

溶融亜鉛めっきが完成するまでの一般的な工程を図でまとめました。

溶融亜鉛めっきの工程

溶融亜鉛めっきの特徴は?

大型の部品や形状が複雑なものでも亜鉛皮膜が析出する溶融亜鉛めっきには、次のような特性があります。

  • 1.皮膜が剥離しにくい密着性
    鉄と亜鉛の合金層が強く結合するため、剥離しにくい密着性が高く、衝撃や摩擦に強い皮膜をつくることが可能。
  • 2.膜厚が50µm厚以上と厚く高い防錆力がある
    市街地なら50年、海沿いであれば10年と皮膜が腐食しない。
  • 3.保護作用がある
    亜鉛めっきの表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜が形成される為、錆を生じにくくする作用がある。
  • 4.犠牲防食作用がある
    亜鉛めっきに、万一、キズが発生し、素地の鉄が露出したとしても、キズの周囲の亜鉛が「鉄より先に溶け出して」電気化学的に保護するため、鉄を腐食させない作用がある。
  • 5.塗装との密着性が良好である
    クロメート処理の必要がなく、そのまま塗装処理が可能である。

溶融亜鉛めっきの事例(参照:日本溶融亜鉛鍍金協会)

  • 温室
    事例1 温室
    温度・湿度が高い温室にて使用
  • 道路
    事例2 道路
    防音壁支柱、ガードレール、標識バリアにて使用

亜鉛めっきに関連する「JIS(専門)用語」

1003 化成処理 1084 犠牲防食
1014 酸化 5006 クロメート処理
2023 引っ掛け,ジグ,ラック 1028 陽極

亜鉛めっきに関連する英語表記

亜鉛 zinc
亜鉛めっき zinc plating
電気亜鉛めっき electro zinc plating
溶融亜鉛めっき Hot dip galvanizing
犠牲防食 barrel processing
クロメート皮膜 chromate conversion coating
クロメート処理 chromating
光沢クロメート coloured chromate conversion coatings
ユニクロ Unichrome
有色クロメート coloured chromate conversion coatings
黒色クロメート black chromate conversion coating
三価クロメート bright chromate(as CrO3)
脱脂 degreasing
酸洗い deoxidizing,pickling
ラック platig rack
ジグ jig
バレルめっき法 barrel processing
RoHS指令 Restriction of Hazardous Substances

亜鉛めっき加工まとめ

亜鉛めっきの特徴を活かすためにも、精密な部品へ耐食性を求める場合には電気亜鉛めっきを選択、大型部品で屋外にて高耐食性を求める場合には溶融亜鉛めっきを選択することを推奨しております。

素材や使用環境において適切な亜鉛めっきを選択すれば、お客様満足度もきっと向上することでしょう。

亜鉛めっきについてのご質問、お困りごとのご相談は随時無料で受け付けています。お問合せフォームまたはチャット、電話などでお待ちしております。

この記事の執筆者

代表取締役社長 清水栄次

三和メッキ工業株式会社
代表取締役社長 清水栄次

全国鍍金コンクールにおいて厚生労働大臣賞、金賞など数多く受賞。めっき業界において始めてIS09001,14001,2700を独自で構築。その中から、めっき特許、並びに独自の技術を商標化。インターネットにて380001以上の取引実績。
めっきセカンドオピニオンによる他社のめっき不良を年間100件解決。

  • 2014年 神戸大学大学院経営学研究科 非常勤講師
  • 2020年 三重大学 非常勤講師

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