無電解ニッケルめっきとは、電気を使用せずに化学的還元作用によりめっきする手法です。一般的には、ニッケルリン(Ni-pめっき)の皮膜を析出させることを指します。
大きな特徴として、めっきの膜厚を均一に処理することが出来ることです。無電解ニッケルめっき液が浸漬していれば「複雑な形状」「寸法精度を有するもの」に対し、最適なめっきです。
リンの含有量が多いと非晶質になり、ピンホールが少なくなる為、耐食性が向上し、耐酸性、温度による非磁性の影響が出にくい等の特性が得られます。めっき処理
基本的にリンが含有している皮膜で3〜13%と幅広い特性を提供することが可能であり、一般的には、「低リンタイプ」「中リンタイプ」「高リンタイプ」に分けられ、磁性特性、耐薬品性、耐食性、硬度などが変化させることが出来ます。
また、べーキング処理(熱処理)を行うことにより、Hv900〜1000程度の高硬度を実現することも可能です。
RoHS指令にも抵触せず、安心して使用することが出来る無電解めっき処理であり、「カニゼンめっき」とも言われる場合が多く見受けられると思うが同じ処理です。
バフ研磨仕上げ処理も可能です。
硬 度 | Hv500±50(めっき厚25µm程度)まで硬度を上げることが可能です。 また、熱処理で最高Hv1000まで硬化することが可能です。 |
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密着性 |
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耐食性 | 鋼上での耐食性は電気ニッケルめっき皮膜より良好です。理由として無電解めっき特有の皮膜厚さの均一性被覆能力が優れていること等があげられます。 また、数%のリンを含有しているため、有機物、塩類、有機溶剤及び苛性アルカリ、希薄鉱酸に対しても優れた耐食性を示します。このリンの含有率が高くなればなるほど耐食性が向上するケースもあります。 塩水噴霧 5µm:24時間 レイティングナンバ10 |
耐摩耗性 | 一般に電気ニッケルめっきより優れ、熱処理温度の上昇に共に耐摩耗性は向上します。650℃の熱処理で、被膜自体のもろさが緩和され、素材との拡散層の形成で密着性が向上し、硬質クロム並みの耐摩耗性が可能です。チタン及び18-8ステンレス鋼等の金属間摩擦により「かじり」「焼きつき」を防止することができます。 |
耐熱性 | 鉄、鋼の高温酸化すなわち表面のスケールを防止します。 200℃以上の熱処理を行いますと変色が始まります。400℃以上の熱処理を行いますと硬度は低下します。 |
溶融点 | 約890℃ |
磁 性 | リン含有量の増加と共に減少し、8%以上では析出状態で非磁性です。ただし、300℃以上で熱処理を行うと、磁化されます。 |
電気抵抗 | 電気ニッケルめっきより高い(約60µΩ/cm)が熱処理により低下します。 |
熱膨張係数 | 11.5~14.5µm/cm/℃で電気ニッケルめっきより低いです。 |
均一析出性 | 所定膜厚の±10%以内。 |
熱伝導率 | 0.0105~0.0135cal/cm/sec/℃ |
内部応力 | 圧縮応力、ただし浴のpHが高いと引張応力となります。 |
基本的に金属ニッケルは塩酸、硫酸、硝酸に溶けます。
<リン含率9%の無電解ニッケルの耐薬品性>試 薬 | 温度 (ºC) |
腐食率 (µm/年) |
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アセトアルデヒド | 65.6 | 0.5 |
アセトン | 室温 | 0.076 |
アクリロニトリル | 65.6 | 0.4 |
硫化アンモニウム | 48.9 | 3.8 |
酢酸イソペンチル | 室温 | 0.048 |
塩化イソペンチル | 室温 | 0.33 |
ビール | 7.2 | 0.2 |
ベンゼン | 室温 | 0.04 |
酢酸ベンジル | 室温 | 0 |
ベンジルアルコール | 室温 | 0.092 |
48.5%塩化カルシウム | 室温 | 0.5 |
カプロラクタム | 85 | 0.76 |
カプリル酸 | 65.6 | 1.52 |
硫化炭素 | 室温 | 0 |
四塩化炭素 | 室温 | 0 |
5%洗剤 | 室温 | 0.94 |
エチルアルコール | 室温 | 0.16 |
エチレングリコール | 室温 | 0.64 |
37%ホルムアルデヒド | 室温 | 0.3 |
試 薬 | 温度 (ºc) |
腐食率 (µm/年) |
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ガソリン | 室温 | 0.56 |
80%乳酸 | 室温 | 3.7 |
メチルアルコール | 室温 | 0 |
ナフサ | 室温 | 0 |
ナフタル酸 | 65.6 | 0.5 |
オレイン酸 | 室温 | 0.3 |
オレンジジュース | 室温 | 0.33 |
テトラクロロエチエン | 65.6 | 3.8 |
石油 | 室温 | 0 |
ポリ酢酸ビニル | 98.9 | 1.27 |
ロジン | 室温 | 0 |
10%炭酸ナトリウム | 室温 | 0 |
3%塩化ナトリウム | 室温 | 1 |
50%水酸化ナトリウム | 121.1 | 0 |
ソルビトール | 65.6 | 2.5 |
ステアリン酸 | 70 | 0.5 |
砂糖水 | 室温 | 0 |
蒸留水 | 室温 | 0.74 |
25%尿素溶液 | 室温 | 0 |
適用部門 | 応用部品 | 使用目的 |
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化学機械工業 | 反応槽、輸送管、パイプ、ポンプ、パイプ内 | 耐食、耐摩耗性 |
電気電子工業 | 接点、シャフト、抵抗体、サーミスタ、ディスク | はんだ付け、耐食、導電性付与 |
自動車工業 | ピストン、軸、シリンダー、測定装置、変速機 | 耐食、硬さ、精密性、耐摩耗性 |
精密機器工業 | 時計、カメラ、電子顕微鏡等の部品 | 耐食、非磁性、硬さ |
その他 | 金型、事務機、船舶、航空、原子力等の部品 | 耐食、耐摩耗性、硬さ |
無電解ニッケル皮膜に弊社の技術力でこのような付加価値を加える事ができます。
例:切削ミスの修正を、メッキ皮膜でできないかなどの案件も、⇒メッキ皮膜10ミクロン±1ミクロンのメッキ皮膜で寸法修正した実績があります。
※詳細につきましては、弊社までお問い合わせください。
また、上記以外の付加価値を加えたい場合でも、ご提案できる可能性がございますのでお問い合わせください。
無電解ニッケルの皮膜特性 | ||
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組 成 | Ni | 87~98% |
P | 2~13% | |
結晶構造 | 非晶質(P4%以上の場合) | |
密 度 | 7.6~8.6g/cm3 | |
融 点 | 880~890ºC | |
密着性 (鉄素材に対して) |
50,000~70,000psi | |
熱膨張係数 | 13µm/m/ºC | |
電気抵抗 | 30~200µΩ・cm | |
硬 度 | 500~700HV(析出時) | |
1000~1100HV(硬化時) |