メッキQ&A
黒色アルマイトが脱色する主な原因は以下の通りです。
1. 紫外線(UV)による劣化
・有機染料の分解:
一般的な黒色アルマイトは、アルマイト皮膜の微細な孔に「水溶性の
有機染料」を吸着させて黒色にしています。
この有機染料は、太陽光に含まれる紫外線エネルギーによって分子構造が
破壊され、色が徐々に薄くなったり(退色)、場合によっては赤みがかって
変色したりすることがあります。
・屋外での影響大:
屋外で直射日光に長時間さらされる用途では、この紫外線による劣化が
最も一般的な脱色の原因となります。
2. 熱による劣化
・有機染料の変質・分解:
紫外線と同様に、有機染料は熱にも弱いです。高温にさらされると、染料の
分子構造が変化したり分解したりして、色が薄くなったり、変色したり
します。
・熱と時間の関係:
高温にさらされる時間が長いほど、また温度が高いほど、脱色は顕著に
なります。
例えば、150℃を超えるような環境下では、一般的な黒色アルマイトは
脱色・変色する可能性があります。
・皮膜のクラック:
アルミニウム母材とアルマイト皮膜は熱膨張率が異なるため、高温になると
皮膜にクラック(ひび割れ)が発生することがあります。
このクラックによって光の反射が変わり、全体的に白っぽく見えたり、
ひび割れた部分から素地が見えて変色したように感じられたりします。
3. 不適切な封孔処理(ふうこうしょり)
・染料の流出:
アルマイト皮膜の微細な孔を閉じる「封孔処理」が不十分だと、染料が皮膜内
にしっかりと固定されず、水や空気中の湿気、洗浄液などによって徐々に流れ
出てしまうことがあります。
・外部物質の侵入:
封孔処理が甘いと、染料だけでなく、空気中の汚染物質や水分が孔の中に入り
込み、染料と反応して変色や脱色を引き起こすことがあります。
4. 化学薬品との接触
・酸やアルカリ:
アルマイト皮膜は強酸・強アルカリ性の溶液には弱く、溶解してしまいます。
また、特定の酸や有機溶剤が染料に作用し、変色や脱色を引き起こすことが
あります。
・過酸化水素水など:
清掃目的で過酸化水素水のような強い酸化剤を使用すると、皮膜が溶解したり、
染料が分解されたりして脱色する事例もあります。
5. 摩耗・摩擦
・表面的な剥がれ:
アルマイト皮膜自体は硬い(硬質アルマイト)ですが、強く擦れたり、物理的な
衝撃を受けたりすると、表面の皮膜が摩耗したり剥がれたりすることがあります。
これにより、下地のアルミニウム素地が露出して、黒色が薄くなったり、銀色が
見えたりして脱色したように見えます。
6. 経年劣化
上記のような特定の原因がなくても、長期間の使用や環境への露出により、徐々に
ではありますが自然な退色や光沢の劣化が進むことがあります。
これは主に有機染料の宿命的な問題です。