FAQ
●クロムメッキ(装飾クロムメッキ)が錆びにくい理由は、主に以下の
2つのメカニズムによります。
・不動態皮膜の形成
・下地メッキによる保護(特に装飾クロムメッキの場合)
1. 不動態皮膜の形成
クロムは、鉄や亜鉛と同じように、本来は「イオン化傾向が大きい
(=錆びやすい)」金属です。
しかし、空気中や水中で酸素に触れると、瞬時に非常に薄く、緻密な
酸化クロムの皮膜を形成します。
この皮膜は、内部のクロム金属を外部の酸素や水分から隔離する「バリア」
として機能します。
この状態を「不動態」と呼びます。
この不動態皮膜は非常に安定しており、通常の大気中ではクロムがこれ以上
酸化(腐食)するのを防ぎます。
まるで、クロム自身が作り出す防護服のようなものです。
これが、クロムメッキが美しい光沢を長く保てる最大の理由です。
2. 下地メッキによる保護(装飾クロムメッキの場合)
装飾クロムメッキは、その美しい外観を出すために、非常に薄い膜(0.1~0.5μm
程度)しか施されません。
この薄いクロム皮膜には、目に見えない微細な「クラック(ひび割れ)」が必ず
存在します。
もしこのクロムメッキを直接鉄鋼材に施した場合、クラックから水分や酸素が
浸入し、下地の鉄が錆びてしまいます。
これが「メッキの下からサビが浮いてくる」現象の原因です。
この問題を解決するために、装飾クロムメッキでは、クロムメッキの下にニッケル
メッキや銅メッキを施します。
・ニッケルメッキ:
クロムメッキのクラックから侵入した水分などから下地を守るバリア層として
機能します。
・銅メッキ:
下地の凹凸を埋めて平滑にし、光沢を出す役割を担います。
つまり、装飾クロムメッキの耐食性は、クロムメッキ自体の不動態皮膜だけでなく、
その下にあるニッケルメッキによる「二重の保護構造」によって保たれているのです。
●硬質クロムメッキの場合
硬質クロムメッキも同様に、クロムの不動態皮膜によって高い耐食性を持ちます。
しかし、硬質クロムメッキは比較的厚い膜(数μm~数百μm)を形成するため、
装飾クロムメッキに比べてクラックが下地まで到達しにくく、単独でも高い耐食性を
発揮します。
ただし、腐食性の強い環境(塩酸などの酸性雰囲気)では、不動態皮膜が溶解して
しまい、クロム自体が腐食することもあります。