FAQ
クロムメッキ製品そのものが人体に直接的な影響を与える
ことは、通常ありません。
しかし、クロムメッキに使われる化学物質や、作業環境には
注意が必要です。
この問題を理解するためには、「六価クロム」と「三価クロム」
という2つの物質と、最終的な「金属クロム」を区別することが
重要です。
1. 最終製品(クロムメッキ皮膜)について
最終的に製品の表面に形成されるクロムメッキ皮膜の主成分は、
金属クロム(Cr)です。
この金属クロムは、無毒であり、人体に悪影響を及ぼすことは
ありません。
人間の体にも微量の三価クロムが含まれており、必須ミネラルの
一つとされています。
・六価クロムを使用したメッキでも安全:
メッキ工程で使われるのは、毒性のある六価クロム化合物です。
しかし、電気めっきのプロセスにおいて、この六価クロムは電気的
に還元され、無害な金属クロム(0価クロム)として製品に析出し
ます。
したがって、メッキ処理が適切に行われ、残留液が完全に洗浄さ
れていれば、最終製品に毒性のある六価クロムは含まれていません。
2. メッキ製造工程におけるリスク
人体への影響が懸念されるのは、主に六価クロムを使用したメッキ
の製造工程です。
・六価クロムの毒性:
六価クロム化合物は、強い毒性を持つ発がん性物質です。
粉末やミストを吸入し続けると、鼻中隔穿孔(鼻の穴を隔てる壁に
穴が開く症状)や、肺がんなどの深刻な健康被害を引き起こす可能性
があります。
皮膚に付着すると、皮膚炎や潰瘍の原因になることもあります。
・作業環境の管理:
このため、六価クロムメッキを行う工場では、作業者の安全を守る
ために厳重な換気設備や保護具の着用、メッキ液の飛散防止策など
が義務付けられています。
3. 三価クロムメッキへの移行
近年、環境規制(RoHS指令など)や作業者の健康保護の観点から、
六価クロムメッキから三価クロムメッキへの代替が進んでいます。
・三価クロムの安全性:
三価クロム化合物は六価クロムに比べて毒性が非常に低く、発がん性
もありません。
このため、三価クロムメッキは、製造工程における人体や環境への
リスクを大幅に低減できます。