FAQ
ADC12にアルマイト処理を施すと「粉ふき」が発生する主な
原因は、ADC12の特殊な合金組成にあります。
特に、以下の要因が複合的に影響します。
1. ケイ素(Si)の含有量
ADC12は、流動性を高めるために9.6〜12.0%という高濃度の
ケイ素を含んでいます。
・皮膜形成の阻害:
アルマイト処理は、アルミニウムを電気分解して酸化皮膜を
形成するプロセスです。
しかし、ケイ素は電気を通さない半導体であるため、皮膜が
均一に生成されるのを妨げます。
・不均一な皮膜:
鋳造品では、このケイ素が結晶として偏析(偏って存在すること)
しやすいため、アルミニウムが豊富な部分とケイ素が豊富な部分
で皮膜の生成速度に違いが生じます。
その結果、皮膜が不均一で多孔質になり、耐久性が低い状態に
なります。
2. 封孔処理の不備
アルマイト処理の最終工程である「封孔処理」は、皮膜の微細な
孔を塞ぎ、耐食性を高める重要なプロセスです。
・不完全な封孔:
ADC12のようなケイ素を多く含む材質では、皮膜の孔が不均一で
大きくなりがちです。
このため、封孔処理が完全に行われず、孔が閉じきらないことが
あります。
・残留薬品の析出:
封孔が不十分な孔の奥に、アルマイト処理液の成分(硫酸アルミ
ニウムなど)が残留したまま乾燥すると、それが白く結晶化して
表面に噴き出してきます。これが「粉ふき」の正体です。
3. 鋳造欠陥
ADC12などの鋳造品は、微細な巣穴(気泡)が存在する場合が
あります。
この巣穴に処理液が侵入して残留すると、乾燥後に同様に白く
析出して粉ふきの原因となります。