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黒アルマイトが真空環境状態で剥がれてしまう原因は?

黒アルマイトが真空環境下で剥がれてしまう原因は、主に
アルマイト皮膜の水分と素材との熱膨張率の違いが複合的に
影響していると考えられます。

以下に、考えられる主な原因を詳しく解説します。

1. アルマイト皮膜内に残留した水分の影響
・封孔処理と水分:
 アルマイト皮膜は、微細な多孔質構造をしています。
 この孔を塞ぐ「封孔処理」は、通常、高温の純水や水蒸気など
 を使って行われます。
 この時、皮膜は「ベーマイト」と呼ばれる水和物(Al2​O3​・H2​O)
 を形成し、孔が塞がれます。
 しかし、完全に水分が抜けるわけではなく、皮膜内に微量の水分が
 残存することがあります。

2.真空環境下での水分放出
真空環境に置かれると、この残存水分が気化し、皮膜の内部から外部
へ放出されます。
この水分放出の際に、皮膜内に圧力がかかり、皮膜が内部から押し出
されるようにして剥離やクラック(ひび割れ)を引き起こす可能性が
あります。

3. 熱膨張率の違いによる応力
・アルミニウム素地と皮膜の熱膨張率:
 アルミニウム素地は熱膨張率が比較的高い金属です。
 一方、セラミックスの一種であるアルマイト皮膜は、熱膨張率が
 アルミニウムよりも低く、硬くもろい性質を持っています。

・真空中の加熱:
 真空環境では、熱の伝導(対流)がほとんどないため、熱は放射
 によって伝わります。
 そのため、特定の箇所が局所的に高温になったり、温度変化が激し
 くなったりすることがあります。
 このような熱環境下では、アルミニウム素地が膨張・収縮する際、
 硬いアルマイト皮膜がその動きに追従できず、内部に応力が蓄積します。
 この応力が限界を超えると、クラックが発生し、そこから剥離が進行する
 ことがあります。

4. その他考えられる原因
・処理の不備:
 封孔処理の不完全性: 封孔処理が不十分だと、皮膜内に多量の水分が
 残存し、真空環境下での剥離リスクが高まります。

・膜厚が厚すぎる: 
 必要以上に厚い皮膜を形成した場合、応力によって剥離しやすくなる
 ことがあります。

・前処理の不備:
 前処理段階での脱脂やエッチングが不十分だと、素材と皮膜の密着性が
 低下し、剥がれやすくなります。

・素材の問題:
 アルミニウム合金の種類によっては、アルマイト皮膜が安定して形成
 されにくいものがあります。

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