PLATING PROCESSES AND TECHNIQUES
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					銅めっきは、銅を使用して対象物にめっきする方法のことです。銅めっきでは、銅の特性である熱伝導性、電気伝導性、展延性を活かし、装飾用、防食用、機能用、工業用などさまざまな分野に用いられています。他には、クロムめっきやニッケルめっき、あるいはニッケルクロムめっきの下地として使われることも多いです。
目次
今では装飾分野から工業分野まで幅広く活用されている銅めっきですが、もともとの銅の性質上、変色しやすく、また酸素を含む水に弱く腐食を起こしてしまうことから、装飾分野においては下地として用いられる傾向にありました。一方工業分野では熱伝導性、電気伝導性、展延性が得られることから、プリント配線板や電子回路などで多く用いられてきました。
                        ひとことで銅めっきと言ってもその方法によって種類が分かれており、現在では硫酸銅めっき、ホウフッ化銅めっき、シアン化銅めっき、ピロリン酸銅めっきのという4つの銅めっきが主流となっています。ちなみにこれら4つの銅めっきは、酸性とアルカリ性の2つに大別できます。[1]
銅めっきの原理は、次の図のようなイメージです。

銅めっきを行う場合は、銅のイオンを含むめっき液の中に、めっきしたい製品を入れ陰極(−)とします。一方陽極(+)には、銅(可溶性陽極)を用いて両極間に直流電源を接続して適当な電圧を与えます。電流を流すと陰極で還元反応が起こり、銅金属が析出します。こうして析出した銅金属が銅めっき皮膜へとなっていく原理です。
ここでは、銅めっきの特徴について説明していきます。銅めっきの特徴は大きく4つで、「電気伝導性が良い」「熱伝導性が高い」「下地めっきとして最適」「めっき後に磨きが可能」という特徴があります。
銅めっきのメリットは次の4つです。
銅めっきのデメリットは次のような3つがあります。
硫酸銅めっきとは、硫酸と硫酸銅を混合溶解させ、さらにこの中に光沢剤や塩素を添加しためっき液で銅めっきすることです。硫酸や硫酸銅は、比較的安価な原料であることから、他の銅めっきと比べて低コストでめっきが可能です。
延性があり、優れたレベリング作用があることから装飾めっきの下地として広く使用されています。
硫酸銅めっきのメリットは、「光沢レベリング作用(平滑作用)がある」「高電流密度領域から低電流密度領域まで鏡面が得られる」「常温で処理が出来るので製品に反りなどが発生しない」「めっき内部応力が小さくて軟らかく、電気伝導性に優れ、延性に優れているなどと物理的性質に優れている」という4つがあります。
他には、めっき浴の管理や排水処理が容易であることもメリットとして挙げられます。
一方、硫酸銅めっきのデメリットは、「鉄鋼や亜鉛素地上に直接めっきすると密着性が悪いのでシアン化ストライクめっきが必要になる」「めっき液が強酸の為、鉄鋼や亜鉛合金素材に対して直接めっきが出来ない」「めっき析出スピードが遅い」という3つがあります。特に硫酸銅めっきでは、鉄や亜鉛といった素材との相性の悪さがあるので注意が必要です。[2]
シアン化銅めっきとは、シアン化銅錯イオンと、過剰の遊離シアン化アルカリを含む液から電着され、酸性浴よりも高い過電圧のもとでめっきされるめっきのことです。
シアン化銅めっきの特徴は、緻密なめっき層が得られ、均一電着性に優れていることです。従って、複雑な形状の素材に対するめっきでもきれいに銅を被覆することができます。また、硫酸銅めっきは難しかった鉄素材や亜鉛ダイカストにも直接めっきすることができます。先ほどの硫酸銅めっきよりも素地金属へのめっきによる影響(侵食等)が少ないため、下地めっきとしてもよく利用されます。
シアン化銅めっきのメリットは、「めっき皮膜が緻密で均一なので複雑な形状にもめっきが可能」であることと、「鉄鋼や亜鉛合金素材に対してめっき出来る」という2つが挙げられます。
先ほども紹介したように、シアン化銅めっきは緻密で均一な皮膜が生成され、電着性にも優れていることから複雑な形状の素材へのめっきでも美しい仕上がりにすることができます。また、硫酸銅めっきとは異なりPH12程度と弱酸性であるため鉄鋼や亜鉛合金素材にもめっきできます。
シアン化銅めっきのデメリットは「レベリング作用に乏しい」「毒物なので安全衛生管理が必要である」「(毒物のため)排水処理も特別な作業が必要」などの3つがあります。
                        レベリング作用とは、平滑作用のことですがシアン化銅めっきは、硫酸銅めっきやこのあと紹介するピロリン酸銅めっきと比べるとレベリング作用が乏しく、光沢にもかけるため美しさは劣ります。さらに、シアンはもともと人体に有害であるとされているため、安全衛生管理や特別な排水処理が必要になります。他のめっきと比べ処理コストが上がってしまうため、めっきコストも高くなってしまいます。[3]
ピロリン酸銅めっきは、ピロリン酸カリウムを混合溶解しためっき浴を使用して行われるめっきです。ピロリン酸銅めっきは、シアン化銅めっきと比較すると有毒性が低く、かつレベリング性が高いことから工業分野で広く用いられています。
ピロリン酸銅めっきのメリットは3つで、「均一電着性に優れている」「電鋳や鉄鋼の浸炭防止に適している」「銅めっき浴の中では一番中性に近く、素材への侵食性が少ないので亜鉛ダイカスト用に適している」というものがあります。
一方、ピロリン酸銅めっきのデメリットは、「特殊な排水処理が必要になる」「鉄鋼への直接めっきが出来ない」「処理液が高価なので製品コストも高くなる」といったことが挙げられます。[4]
主な銅めっきの皮膜特性比較
| 硫酸銅めっき | シアン化銅めっき | ピロリン酸銅めっき | |
|---|---|---|---|
| 光沢 | 非常に良い | やや劣る | 良い | 
| レベリング | 非常に良い | やや劣る | 良い | 
| 均一電着性 | やや劣る | 非常に良い | 良い | 
| めっき物性 | 延性大 | 抗張力大 | 抗張力大 | 
| 鉄鋼への直接めっき | 密着不良 | 可能 | 密着不良 | 
冒頭で、銅めっきは装飾分野から工業分野など幅広い分野で使われているとお伝えしましたが、具体的な用途としては、プリント配線板や車載用電子部品、グラビア印刷用厚付け用、プラスチック上へのめっき、フライパン底部への厚付けといった用途があります。
 
                                     
                                     
                                    Ep-Fe/Cu20・・・鉄上に銅めっきで20μm厚狙い
| 147 腐食 | 1029 陰極 | 
| 1028 陽極 | 1014 酸化 | 
| 2002 光沢剤 | 1065 レベリング | 
| 1066 均一電着性、マクロスローイングパワー | 
| 銅めっき | copper plating | 
|---|---|
| めっき | plating | 
| 展延性 | malleability | 
| クロムめっき | Chrome plating | 
| ニッケルめっき | Nickel plating | 
| イオン | ion | 
| 陰極 | cathode | 
| 陽極 | anode | 
| 還元反応 | reduction reaction | 
| バフ研磨 | Buffing | 
| クラック | crack | 
| 殺菌性 | Bactericidal | 
| 抗菌性 | antibacterial | 
| 硫酸銅めっき | Copper sulfate plating | 
| 光沢剤 | brightener | 
| 塩素 | chlorine | 
| レベリング | leveling | 
| シアン化銅めっき | Copper cyanide plating | 
| 亜鉛ダイカスト | zinc die casting | 
| 亜鉛合金 | Zinc alloy | 
| ピロリン酸銅めっき | Copper pyrophosphate plating | 
| 均一電着性 | throwing power | 
| ダイカスト | die-cast | 
銅めっきは、種類によって特性が異なるため素材や必要とする特性に応じて適切なめっきを選択して銅めっきを行うことが大切です。適切な選択ができれば、下地めっきとしてだけでなく、銅の特性を最大限引き出すことができるためさまざまな分野での活用が期待できます。
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脚注